ほしぞら高原鉄道『489系電車(白山カラー)』
元々は『ラッピング電車』のベース車両にするのを目的に、中古導入したものだったが、ボンネット先頭車から来る独特の威厳ある風格に押され、状態も悪くはないことから、装飾の計画は見送られた。
 △碓氷峠通過時、EF63と連結した方の先頭車。
記事『ボンネット特急がやってきた日』
この時、既にこの世からボンネット特急…151系から始まり、161系、181系、交直流両用の481系、483系、そして485系及び489系…風格のあるその先頭部を持つ特急は、今では風前の灯…もはや、国鉄形の特急車両ですら、新世代のJR特急に引導を渡されている時期でした。
『あの時のボンネット特急が走る姿をもう一度見たい』という声が少なからず聞こえるようになっていく。
この頃のほしぞら高原鉄道は、輸送需要が拡大し始めており、新たな車両…特に、優等や団体に使用できる車両の調達が望まれていました。そして、ある仲介業者より、これ以上ないある車両の存在を知らされたのでした…。
その車両が回送されてくると知るや否や、その回送列車が走る日が何らかの手段で知った人たちは、その車両を一目見ようと集まった。沿線にある撮影スポットには多くの鉄道ファンらが集まり、走る列車を練習台に、いつ来るかもわからない『標的』を逃すまいと撮影を繰り返していたのでした。
『来たぞー!!』
どこからともなく、号令がかった大声が聞こえると、一斉にカメラを向ける。
確かに、列車が走ってくるような音と、踏切とかで線路の近くで撮っているファンに向かって警笛を鳴らしているような音も聞こえる。やがてヘッドライトの明かりが見え、その車両が姿を現した。
走ってきたのはEF65-500P形が牽引する寝台特急列車。確かに希少価値は高いとはいえ、この鉄道では時々見られる列車である。
『違うじゃんか』
『やっぱ、ブルートレインかっこいいな!!』
様々な声が交錯している撮影地。
そうこうしているうちに、次の列車が走ってくるような音と、踏切かどこかを通過する前か何かの警笛の音が聞こえる。
『そろそろ来るか!?』
対向列車となるEF66牽引の貨物列車が通過していくが、この場所からなら問題ない。
やがて、列車のヘッドライトの明かりが見えてきて、警笛の音ととともに重厚な走行音が聞こえてくる。再び誰かが号令するかの如く、大声を出して合図をすると、周りにいた鉄道ファンたちは一斉にカメラを構え、シャッターボタンに指を置く。
そして、やってきた列車に人々は驚愕の声をあげ、無我夢中でシャッターを切る。その感激をシャッターで、その目とカメラに焼き付けるかのように。
『すごいのが来たー!!』
やってきたのは、既に消滅したはずの489系ボンネット特急。しかも、国鉄特急色でもない、白山カラーの7両編成だったからだ。既に碓氷峠の廃止から十数年の歳月が経過し、急行『能登』を定期運用に、時にはスーパー雷鳥やはくたかの代走などで走っていた車両も、いつしか国鉄特急色に戻され、このカラーは消滅していたはずだった。それから数年後には、能登号が定期運用を終了して臨時列車化。同時に489系ボンネット特急も終止符がうたれたものと思われていた。そう、姿を消していたのだから…
そして、目の前の線路を走り抜けていった列車は、編成両数こそ少ない7両編成だったものの、そこに走ったのはまさしく『白山』だったのだから。
(後に、同じ時間帯に別の人が撮影した写真を見たところ、付けていたヘッドマークは『白山』ではなく『はくたか』だったとのこと…。)
やがてすれ違ったように走り抜けていく反対方向の列車は、同じようなカラーの485系…スーパー雷鳥であった。パノラマグリーン車が最後尾であるものの、その風格は後継の列車『サンダーバード』以上のもののように見えた。
『競演を撮れなかったのが残念だったなぁ』
そう言っている人もいたが、あの車両はまだこの鉄道に入線したばかり。その機会はこれから何度もあるのではないだろうか?と、疑問を覚えた。
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